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一般社団法人 東京アート工芸 / Tokyo Arts & Crafts

お知らせ・イベント情報 美術評論家 清水康友先生特別講演会開催ご報告

東京アート工芸理事会会議にて、美術評論家 清水康友先生講演会を開催

2021年7月17日 第3回 東京アート工芸理事会 会議後に、美術評論家 清水康友先生の特別講演会が催されました。
当日の講演内容の概要を、ホームページ掲載記事用に再構成したものをご紹介致します。


<清水 康友 先生:プロフィール>


清水 康友(しみず やすとも)
美術評論家

早稲田大学にて東洋史、東洋美術史を学ぶ
美術評論家として美術史研究、講演、執筆活動、美術に関するコンサルティングを行う
美術誌に連載中
国際美術評論家連盟会員
日本美術専門学校特別講師







清水康友先生 特別講演「公募展と工芸について」

日本の工芸は、幅が広く伝統的なものも多く、世界に誇るべきものである。
江戸時代の終わりにパリ万博にてヨーロッパの人々を魅了し、ナポレオン3世から表彰され、絵画でも印象派にジャポニズムとして影響あたえるなど、世界に評価されてきたものである。

現代の日本における展覧会には、大きくわけて次の2つの形がある
1.公募美術団体展
2.コンクール展
東京アート工芸は一般社団法人であり、公(おおやけ)の組織である。
公募美術団体展で文部科学大臣賞を設ける段取り・手続きとして、文部科学大臣賞では東京都知事賞を受けている事が条件となるが、その点において東京アート工芸は、とてもシステマティックに手順を踏んでいる。
戦後70年。歴史ある美術団体は、これまで展覧会を50~70回開催してきている。団体同士離合集散あった上で、多くの美術団体は国立の美術館と東京都美術館で展覧会を開催している。
公募美術団体展の在り方としては、焦らずに緩やかに 変えることは変え、受け入れるところは受け入れて固めていくことが大事である。

関東での展覧会開催は、東京都美術館と国立新美術館がメジャーである。
歴史という点では東京都美術館だが、国立新美術館はナショナルギャラリーである。各美術団体がホームとする美術館を決めかねていた時代、日展の動向が注目を集め、その日展は国立新美術館を選んだ。東京都美術館には院展(日本美術院)が行き、二つに分かれて棲み分けがなされた。

陶芸の作品は、かつては「使うもの」であった。長きにわたり民芸、民陶の「用の美」が大切にされてきたが、戦後「使うもの」から離れ、前衛陶芸が誕生した。
これと同じようにして東京アート工芸は、美術団体の中で清新で新しいジャンルとして育つのではないだろうか。

美術展の運営で一番大事なのは、作品の良し悪し、作家、お金である。やはりお金がないと運営ができない。
また美術館の改修工事等でこれまでの美術館で展覧会ができなくなった場合など、不測の事態に対する備えも必要である。
少子高齢化も各団体にも影響しており、今回の新型コロナウイルスの件などでも会員が減る危険もある。
こうした事態において美術団体には、会として存続していくためのアイデアが必要である。
作品の販売を考えているのは良いことである。欲しい人に作品を売るのは作品の幸せであり、作者にとっても良いことである。そして作品販売の利益を有効利用することも良いことである。販売の方法や場所を考える事。寄付により都知事賞の設定を目指すのも一つの方法である。
展覧会は生き物であり、社会情勢も関わってくる。歴史の長い展覧会は戦争時の紆余曲折をも乗り切ってきた。ジャンルが異なっても、わかりあい、横のつながりを大事にしながら盛り上げることが大事である。

美術団体において、長、役職者は大変な職務である。肩書はただあるのではなく、指令系統をつくり、有益な組織づくりをし、仕事をしていかなければならない。東京アート工芸は今、いいものをつくっているところである。

公募美術団体展は、作家による作家のための作家の展覧会である。大事なのは、制作意欲と愛会精神を持つこと、そして後進に道を作ることである。
偏りを出さず、透明性を保つことも大事である。
外部審査員は公募美術団体の風通しをよくするために必要である。都知事賞や大臣賞を設置するにも外部審査員が必要であり、申請時に外部審査員の有無を聞かれる。

公募美術団体展のいいところは、コンクール展と違い、開催のたびにご破算にならないことである。コンクール展は開催のたびに審査員が代わる事も多い。
公募美術団体展では出品者の継続した歩みがわかる。教育機関として出品者が作家として育っていく過程がみられ、出品者もここで学ぶことができる。出品者にその都度アドバイスもできるので、出品者の出品の意義は「勉強になるから」となる。
「ものを作る」という創造の意欲は無限である。美術大学でも公募展でも、「みんなで勉強できる場」にすればよいと思う。


会場での質疑応答

戸田揖子チーフ理事:
国立新美術館をホームグラウンドとすることを目指している。今の東京アート工芸の活動は、その目標に合っているだろうか。

清水康友先生:
団体展のスタートは画廊から始める事も多いが、東京アート工芸はユニークである。
自分たちの場、ホームグラウンドを得るためには「生みの努力」は必要。
そのためには「東京アート工芸」という名前を広げないといけない。
ネットを利用することもよいが、バーチャルなので質感などもわかりにくく、実際に作品を見ることにはかなわない。
実際に展示しているものを見て、「欲しい」、「作りたい」と思ってもらうことが、展示会の意義であり、醍醐味である。
意中の会場での展示会開催に向かって準備することは、大変ではあるが大事である。


近孝子監事:
東京芸術劇場での公募美術展開催において、アドバイスをお願いしたい。

清水康友先生:
東京芸術劇場はコンサートホール・ホテルがある複合的な施設であり、近くに大学がある文化的な環境である。
来場者は女性が多く、心地よく、アクセスがよい他、駅がメジャーであること、駅にデパートがある等条件的には最高に良い。
最終的な目標にしている国立新美術館での公募美術展開催という目的が、ブレないことが大事。


鈴木淳子理事:
清水先生と久しぶりにお会いした。わかりやすく分析していただき良かった。
今後ともよろしくお願いします。

清水康友先生:
東京アート工芸は、何十年もかかって他の美術団体がやっていることを凝縮してやっている。
試行錯誤して最善の道を探り、焦らず進めることが大事である。
今回は、何かの役に立てばと話させてもらった。


杉本千代子理事:
国立新美術館で公募美術展を開催するためには、どのようなことが必要であるか。

清水康友先生:
国立新美術館をホームグラウンドにしたいという、意思を示すのが大事である。
国立新美術館では、実績を積んでいるかが審査される。
書類がしっかりと作成されていることも大事である。提出書類を有識者が全部目を通しているかは考えづらいが、以前、書類にランクがつけられたことがあった。常に発行しているニュースレターを提出するなど、アプローチして報告するのがよいのではないだろうか。
ドロップアウトする団体が出て、空いたところに入れる可能性もある。
また、日展の開期が1週間短くなって入れたということもあった。
時期など選り好みせず取り敢えず入って、そのあとで要望を伝えてはどうだろうか。



※2021年7月17日 一般社団 東京アート工芸 第3回理事会 会議(於:品川区立総合区民会館 きゅりあん 会議室) 
※講演内容(概要)を、ホームページ掲載用に再構成致しました。



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